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新型コロナでツーリズムはどうなる?世界各国の現地報道から推測(前編)

26 May 2020

新型コロナウイルス(COVID-19)の流行により、世界中で広がっているツーリズムへの影響。徐々に都市のロックダウン解除なども始まっていますが、今後観光産業はどうなっていくのでしょうか?

アジアのシティガイド「HereNow」運営や、地方自治体のインバウンドマーケティングのお手伝いなどを行っている、株式会社CINRAのInternational Companyが、各国のローカルメディアなどで報じられている内容を参考に、それぞれの国におけるツーリズムの今後を推測。前編ではアジア諸国、後編では欧米豪の動向を、それぞれ紹介していきます。

リサーチ・テキスト:井手聡太、原里実  

前編・後編を通じてのサマリー

・観光業のV時回復は見込めず、2021年から2022年頃までかけた緩やかな回復の見込み
・世界共通で、まずは各国、国内需要をターゲットに観光業を復興させる見込み
・中国の隣国は中国からの観光客再開を期待しつつ、アメリカ・ヨーロッパに先駆けて回復へ向けてスタート
・当面は個人旅行者を対象に、ショートトリップの提案が必要
安全性へのニーズの高まりを受け、対策の実施、情報開示が重要となる
・オーバーツーリズムからアンダーツーリズム、サステナブルな観光を重視する流れ
・二国間以上で観光面の協力体制をとる「トラベルコリドー」形成の動きが各地で起こっている  

国連世界観光機関(UNWTO)による予測

はじめに、国連世界観光機関(UNWTO)が5月7日に発表した分析と予測について紹介します。これは、UNWTOが世界の専門家パネルを対象に調査を行い、その結果をレポートしたものです。


・2020年の第1四半期においては、国際的な観光客は22%減少。今後年末までに、2019年と比較して58%から78%の減少となると予測。
国際需要よりも早く、国内需要が回復すると予想。
・2020年最終四半期までに回復の兆しが見られると期待する専門家も多い一方、大部分は2021年までかかると予想
レジャー旅行、とくに友人や親戚を訪問する需要が、ビジネス出張よりも迅速に回復すると予想。
・専門家の地域別では、アフリカと中東では大部分の専門家が2020年中の回復を予測。南北アメリカの専門家は最も悲観的。ヨーロッパとアジアではまちまちで、専門家の半数が2020年中に回復が見込まれると予想している。
出典:International Tourist Numbers Could Fall 60-80% In 2020, UNWTO Reports, UNWTO 


専門家の住むエリアによって危機感の度合いが異なる部分はあるものの、今後の見通しについて決して楽観視はできない結果であることがわかります。  

【香港】政府観光局の主導で、大規模な予算を投入

すばやい初動対応で、早期に「緊急事態」を宣言、春節行事中止、観光施設閉鎖などの措置をとった香港。人口は750万人以上ですが、感染者数は1052人、死者は4人にとどまっています(5月18日現在)。  

そんな香港では、政府観光局が業界関係者へ向けて毎年開催しているカンファレンスが今年はオンラインで行われ、パン・ユウカイ会長が今後の予測や観光復興計画を発表しました。香港で発行されている日刊英字新聞『South China Morning Post』に掲載されたレポート記事によれば、パン会長は「(COVID-19は)実際のところ、世界の観光市場における香港の立ち位置を見直し、サービス水準を高めるためのよい機会になる」と述べ、下記のような展望を発表したといいます。


・回復がいつになるか予測することは困難であり、諸外国の渡航制限やフライト欠航によりV字型のリバウンドは不可能。
・いずれの国も、観光産業回復のために数億、数十億ドル規模の予算を費やすことになるだろう。
・市場分析によると、中国本土や近隣諸国からの観光客は、コロナウイルスが落ち着いた直後は国内を旅行する。
・その後海外旅行が追随するが、短距離かつ短めの旅程が好まれる
・訪問者の回復は、個々の国の状況に依存する。キーとなるのは、パンデミックが安定すること、渡航後の14日間の経過観察が必要なくなること、香港〜中国間のフライトが再開すること。
・今後旅先を選ぶにあたって旅行者はより価格を気にするようになり、健康リスクが低い旅先を好むようになる。
・中国本土のMICE市場は減速し、活動はオンラインで行われるか、延期となった。
長距離の旅行は回復に時間がかかり、香港からの海外旅行は今年の最後の四半期まで再開されない可能性がある。
出典:As global travel and tourism braces for a long slump, can Hong Kong overcome this existential challenge?, South China Morning Post


ニューヨークに拠点を置き旅行業界に向けた情報を発信している『Skift』も、同じカンファレンスを受けて記事を掲載。カンファレンス後に行われた観光局長のデーン・チェン氏へのインタビューでは、「香港の訪問者体験を​​見直し、再構築するための議論は、COVID-19危機の以前からから始まっていた。それは、世界における香港のイメージや、旅行者のパターンや好み、そして彼らへのコミュニケーションの方法など、多くが変わってきていたから」という発言があったと紹介しています。そのうえで、チェン氏の語った今後の見通しを下記のように述べています。


・今後は、ショートトリップ健康をテーマにした旅行が人気になる。
・2020年4月から2021年にかけての香港政府観光局の予算は1億4,500万ドル(11億2,000万香港ドル)であり、そのうち5,200万ドルが、COVID-19収束後の支援に費やされる。
・復興計画は下記の三段階に分かれている。
1. 小売やレストランとの共同プロモーションにより、地元住民がホリデーを自宅で過ごすよう促進。 2. 旅行者へのプロモーション強化、助成金提供。
3. ミーティングやコンベンション誘致のためのプロモーション強化、助成金提供。
出典:Hong Kong Sees Crisis as Its Path to Overdue Reinvention of Tourism, Skift 


香港では政府観光局がみずからカンファレンスで情報発信し、各国より先んじて転換の構想を発表している印象。コロナ危機の以前から、香港の観光ブランド転換を模索していたという点も印象的です。  

【ベトナム】一足先に国内観光プログラムの実施へ

厳しい外出制限や接触者の隔離を実施し、感染者数は318人、死者は0人にとどまっているベトナム(5月18日現在)。航空会社、鉄道、バス等が再開し、東南アジアでもっとも早く観光インフラが復活した国のひとつでもあります。5月10日に掲載された『South China Morning Post』の記事では、世界遺産の街・ホイアンで観光産業に携わる人々へのインタビューを通じて、街の現在の姿について紹介しています。


・3月下旬に海外からの入国を禁止しているため、外国人旅行者はほとんどおらず、ホテルやレストランは国内や地元の人々へ向けた施策をしている。
・ホイアンの主要産業は観光であり、昨年の535万人の観光客のうち75%を外国人が占めていた。
・休業の期間を使って、ビジネス再開時によりエコなオプションを提供するプロジェクトを進めていた会社もある。たとえば、ホイアンでホテルやツアーを主催するある会社は、有機農園を拡大し、オーガニックレストランを開店する準備をしていた。
・ホイアンでは、オーバーツーリズムから「アンダーツーリズム」(よりローカルで、静かでのんびりとしたエリアに足を運ぶ観光スタイル)への切り替えが進んでいる。
出典:Vietnam tourism hotspot reopens, but draws locals not overseas visitors amid plunge in international travel, South China Morning Post 


また、ベトナム政府観光局は、2020年6月1日から12月31日まで、「ベトナムの人々がベトナムを旅行する」プログラムを実施することを発表しています。


・プログラムは全国的に実施。
・ベトナム政府観光局は、旅行商品・サービスを充実させ、魅力的なツアーを設計するため、地方自治体や航空会社、企業などと連携。
・地方自治体は、地元の観光地や施設の入場料を割引したり、旅行パッケージの魅力を高めたりするなど、詳細な対策を講じることを推奨されている。
出典:Joining hands to stimulus tourism, Nhan Dan 


ベトナムは、新型コロナウイルスの感染抑え込みに成功していると各国から評価されており、国民の満足度も高め。そのぶん、国内需要からのスタートではありますが、いち早くスタートダッシュできている印象です。

日本でも経済産業省や国土交通省観光庁、農林水産省が主体となって「Go To」キャンペーンを予定していますが、収束後の国内需要の流れに乗るためには、日本人にとっても新しい施策を早期に打ち出せるがどうかキーになってくるかもしれません。  

【タイ】再開後のメインターゲット、中国人をどのように取り込むか?

国際線旅客機の乗り入れを認めない措置を、6月末まで延長することを発表したタイ。首都・バンコクで発行されている日刊の英字新聞『Bangkok Post』では、タイ国政府観光庁が発表した今後の見通しが報じられています。


・2020年の外国人観光客数はほぼ3分の2が減少し、14年間で最も低いレベルの1,400万人まで落ち込む可能性がある。
・2019年の外国人観光客の支出は1.93兆バーツ、GDP(国内総生産)の11%に達しており、タイにとって観光は重要な産業。
・タイ国政府観光庁のユタサック・スパソーン総裁によれば「最良のシナリオでは、国内観光が2020年6月〜7月に改善しはじめ、10月に外国人観光客が戻ることを期待している」という。

出典:Tourist arrivals may fall by 65%, Bangkok Post 


訪タイの観光客は、国別では中国がトップ。『Skift』の4月24日付の記事では、「タイのツーリズムは、パンデミックからの回復の道を切り開くため中国をあてにしている」と題し、次のような内容を紹介しています。 


・中国や他の多くの国々と同様に、タイの観光市場回復の道のりは、まず国内および地元から始まると予想。
・ある調査では、中国の旅行者の53%が、2020年中に海外旅行を計画。なかでも8月、10月、12月の人気が高かった。調査対象者のうち、71%がタイへの旅行を希望。
・中国ではじめに海外旅行を再開するのは、20歳から40歳までの、デジタルに精通した個人旅行者になるだろう。それは、彼らがテクノロジーとスマートフォンの使用で海外旅行のリスクを減らすことができると信じているから。
・中国人観光客をターゲットとするホテルは、「Ctrip」「Fliggy」など中国で人気のある旅行eコマースサイトや、「Alipay」のような支払いシステムを採用すべき。
安全とセキュリティは、近い将来、中国人を含む海外旅行者にとって最優先事項となるだろう。
出典:Thailand Tourism Looks to China to Start Down Path for Pandemic Rebound , Skift


中国からの観光客の戻りを期待しているタイ。中国で海外旅行をいち早く再開する層が求めるニーズをしっかりと把握し、その期待に応える施策を打ち出していけるかどうかは、日本の自治体や企業にとっても今後重要になってきそうです。  

【モルディブ】超富裕層に振り切ったユニークな施策へ?

国内人口を上回るほどの観光客が訪れる、インド洋の島国モルディブ共和国。いくつかのリゾート島で新型コロナウィルスの感染者が発生し、島ごと封鎖されるなどの事態となりました。

5月1日公開の『Skift』の記事では、国内からの観光需要に頼ることができないモルディブならではともいえる、ユニークな今後の展望が紹介されていました。


・新しい衛生対策の導入により、今後の旅行はより高価になることが予想されるため、モルディブ観光のコロナ後のターゲットは、超富裕層とするのが理想的ではないか。
・プライベートジェットであれば、乗客は数名のため、到着時に空港のVIPラウンジで隔離しウイルス検査を実施することができる。
・モルディブでリゾートを経営する「Soneva」は、プライベートジェットでのモルディブ旅行を求める人々から約20件の問い合わせを受けているとのこと。
・人数は少なくても、これらのゲストは合計で約500万ドルを出費してくれる可能性がある。
「ひとつの島にひとつのリゾート」が基本のモルディブは、ソーシャルディスタンスを具現化した最善の例といえる。
出典:When You Don’t Have Any Domestic Tourism to Rely On: Maldives as a Pandemic Case Study, Skift


今後のツーリズムを考えるにあたって世界的に重要となる「安全性」を、客単価を上げることで収益と成立させようとするモルディブの興味深い事例。「1島1リゾート」という、もともとの「モルディブらしさ」とマッチしている点も注目です。「プレミアム感」を打ち出している日本の地域にとっても参考になりそうです。

つづいて後編では、欧米豪エリアと、オンライン体験にまつわる世界の動向を紹介していきます。


■Information
インバウンド戦略における外国人視点を把握する「コンテンツポテンシャル調査」をリリース

インバウンド、アウトバウンド問わず、さまざまな観光プロモーションの実施のほか、アジア11都市で展開するシティガイド「HereNow」も運営する株式会社CINRAのInternational Companyが、このたび新ソリューション「コンテンツポテンシャル調査」をリリースしました。

異なる文化を持つ旅行者がターゲットとなるインバウンドでは、地域で一番人気の観光コンテンツが受けなかったり、逆に思わぬコンテンツが人気だったりといったことが頻繁に起こります。

本サービスは、そういったインバウンドにおける「ギャップ」を把握することが可能となるサービスです。【旅前】【旅中・旅後】といったニーズに合わせて、オンラインまたは現地調査を実施します。 https://www.cinra.co.jp/news/contents_survey  

コロナ禍の観光プロモーションについて、無料オンラインお悩み相談会開催!

新型コロナウィルスの影響により観光事業に大きな打撃を受けたり、課題を抱えたりしている自治体・企業様10組に向けて、無料のお悩み相談会を開催いたします。

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など、些細なお悩みでも構いません。お気軽にご相談ください。 https://www.cinra.co.jp/news/online-2  

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