
CINRA, Inc.のアイデンティティーは「クリエイティブな意思に耳を澄ませ、他者を知るきっかけをつくる」ことです。
自社メディアを運営しながら、受託制作においてさまざまなメディアを編集方針からつくってきた編集者たちも、このアイデンティティーを大事にしながら日々のものづくりをしています。それにより、私たちにしか生み出せない「価値観」をかたちにし、世の中に届けることができているのだと思います。
今回は、CINRA編集者たちの頭のなかにある、その「価値観」や「考え方」をあらためて言語化し、「8つのバリュー」に落とし込んでみました。
編集者たちが、メディアや記事づくりで大切にしているものとは? いままで公言してこなかった、「CINRA, Inc.の編集らしさ」に迫ります。
まずは、CINRA, Inc.の編集者たちに、記事を制作するうえで「大事にしていること」と、「してはいけないと思うこと」を聞いてみました。
※一部抜粋
・出来事や事例をただ伝えるのでなく、その裏側にある本質や意思を届ける
・個人の当事者意識、問題意識を大事にする ・読者にインスパイアを与えること
・量も質も大切にする
・編集者自身が取り上げるテーマに興味・関心・熱意を持って、楽しく取り組むこと
・読者になぜそれを伝えなきゃいけないのか、読者はなぜそれを読まないといけないのかを意識する
・「なぜその人がそういうことをしているのか?」「なぜこう考えるのか」など、物事の根底にある「なぜ」を深掘りしていく
・記事の目的や解決したい課題、届けたい人を明確にする
・対象へのリスペクトを忘れない
・悪意を持ったり贔屓したりせず、フラットな目線を持つ
・記事で扱うテーマを知らない人・関心がない人が読む場合も想定して、届け方を考える など
※一部抜粋
・差別や搾取に加担する
・ある対象を語るときに、別の対象のことを悪く言う
・他社メディアのマネや、オリジナリティーのない企画をする
・内輪の満足のために「なんとなく」で記事をつくる
・PVを稼ぐためだけに、誰かを傷つけたり分断を煽ったりする
・自分の仮説を押しつける
・先入観を持って記事をつくる など
これらの「大事にしていること」「してはいけないこと」がどんなカテゴリーに分けられるのかを整理してみると、CINRA, Inc.の編集者が大切にしている8つのバリューを導き出すことができました。
8つのバリューを、ひとつずつ解説していきます。

記事に説得力を持たせるためには、まず編集者自身が、主題や課題を自分と関係ないものとせず、熱意を持って自分ごと化する。そうすることで、記事に編集者の熱意や想い、モチベーションが加わり、読者に「伝わる」記事になる。
出来事をただの「情報」として届けるよりも、取り上げる作品やインタビュイーの奥にある「想い」を引き出したり、読者の考えを代弁するような「問い」を投げかけたりすることが大切。「なぜこう考えるのか?」など、物事の根底にある「なぜ」を問い続けて深掘りすることで、読者に本質や意思を届けることができる。
企画にぶれない軸を持たせることが、価値のある記事をつくる。そのためには、クライアントの課題や記事の目的を明確にし、届けたいターゲットの視点を忘れずに記事づくりを行なう。
読者が記事を読んだあとに、なにかしらの「想い」を持ってもらえるようにつくる。「知らなかったことを知れた」「楽しかった」「癒やされた」「元気が出た」など、読んだ人に良い影響や変化を与えることを目指す。メディア「CINRA」では、読者が記事に対して10段階評価のフィードバックをつけられる仕組みを実装。これにより、記事ごとのインスパイア度を数字として可視化している。

世の中には本来、「自分に関係のない情報」というのは存在しないはず。記事で扱うテーマを知らない人や関心がない人にも「おもしろそう」「新しい発見を得られそう」と思ってもらい、実際に読んでもらうために、意外な切り口の企画づくりや、タイトルのつけ方、メインカットの選定など、入り口づくりにもこだわる。
読者が「メディアがつねに動いている」「良い情報が毎日発信されている」と感じる運用をすることで、より強い信頼関係を築けるはず。コンスタントにサイトに訪れてもらえるよう、計画的な運用スケジュールを組み、掲載本数を確保する。そのうえで、読者をインスパイアできる「質の良い記事」をつくり、結果としてのPVにもこだわる。どちらか一方ではなく、どちらも追い求める。
メディアが持つ影響力を意識し、さまざまな立場にリスペクトを持って記事づくりを行なう。誰かを傷つけたり、分断を煽ったりせず、フラットな目線を持つ。取り上げ方次第では誰かを傷つける可能性があるため、「これを発信するとどんなことが起きるか」など、想定される事態を考える「想像力」も必要。
「自分たちだからできる」という独自性を忘れない。たとえば、インタビュー企画でも、ゲストがこれまで一度も話したことがないような題材など、そのメディアならではの視点や、ゲスト自身にも発見があるような企画を目指す。
これまでCINRA, Inc.が制作してきた記事で、8つのバリューを意識して体現できたものを一部ピックアップしました。
●記事タイトル
ワクワクさんこと久保田雅人×藤原麻里菜。「無駄」からはじめるサステナブル
●誰の意思を誰に届けられたか?
『つくってあそぼ』のワクワクさんこと久保田さんと、「無駄づくり」に挑み続ける発明家・藤原さん、両者ならではの「サステナブル」のとらえ方と、三井化学のオープン・ラボラトリー活動「MOLp」の活動を、幅広い層へ届けられた。
●編集で気をつけたことは?
・「サステナブル」は高尚なものではなく、もっと身近なものだということが伝わるように、表現を丁寧に噛み砕きわかりやすくした

CINRA, Inc.でコンテンツ制作をサポートしている、三井化学のオープン・ラボラトリー活動「そざいの魅力ラボ(MOLp)」のオウンドメディア
●記事タイトル
怪獣絵師・開田×『ゴジラS.P』怪獣デザイン山森がゴジラを語る
●誰の意思を誰に届けられたか?
「怪獣」という日本独自の文化の魅力とクリエイターの思いを、海外の読者に届けられた。
●編集で気をつけたことは?
・この記事を掲載したメディア「JFF+」は、海外の読者に向けて日本映画を紹介しており、ゴジラは海外でも人気の作品のため、ここでしか読めない英語でのインタビュー記事になるよう意識した
・「怪獣」という日本独特の概念が伝わりやすいように説明の順序や表現を工夫した

CINRA, Inc.でコンテンツ制作をサポートしている国際交流基金のオウンドメディア「JFF+」
●記事タイトル
描くのは、性を謳歌する「美男子」たち。画家・木村了子が見つめるエロティシズム
●誰の意思を誰に届けられたか?
女性の美人画を逆転させて、イケメン男性をエロティックに描く日本画家・木村了子さんの創作の原点や、表現における性的消費の考え方などを、女性読者だけでなく幅広い層に届けられた。
●編集で気をつけたことは?
・過度に肌や胸を露出した女性の絵をつかった広告がたびたび炎上していることを背景に、「それが逆転した場合も問題なのではないか?」「イケメンを愛でるのは『性的消費』なのか?」という部分にも切り込んで話を聞いた
・自身の作品も批判され得ることをわかったうえで、作家としての態度を誠実に答えてくれた木村さんの意思が、読者に誤解なく伝わるように意識した

CINRA, Inc.でコンテンツ制作をサポートしていたirohaのオウンドメディア「iroha CONTENTS」
●記事タイトル
調子が悪い=怠けてる、は違う。『自転車屋さんの高橋くん』作者の「孤独を和らげる」漫画
●誰の意思を誰に届けられたか?
更年期障害についてもっと知ってほしいというクライアントや、漫画を描いてくださった作家さんの想いを、更年期障害について興味がある人だけでなく、ない人にも幅広く届けられた。
●編集で気をつけたことは?
・作家さんの意見を尊重しつつ、クライアントの要望も取り入れてもらえるよう丁寧にコミュニケーションを取りながら制作した
・病気のことだけでなく、「助け合いの重要さ」というより大きなメッセージが伝わるようにした
・メッセージを伝えつつ、「漫画としてもおもしろいものをつくる」という共通認識を、クライアントと作家さんにも持ってもらうようにした

●記事タイトル
シティポップの世界的ブームの背景 かれらの日本という国への目線
●誰の意思を誰に届けられたか?
なんとなく「シティポップって良いよね」「おしゃれだよね」「昔の日本ってすごいね」と思っている人たちに、「シティポップブーム=日本が評価されている」と安易に解釈することや、誤った歴史認識を広めるのは危険だと警鐘を鳴らす評論家たちの意思を届けられた。
●編集で気をつけたことは?
・「それっぽい記事」にならないよう、徹底的に資料にあたり、Web上の記事のなかでも「重要な基準となる資料」として決定的なものにすること
・記事内の意見だけでなく、記事を書くうえで参考にしたほかの書籍などへの導線もしっかりと設けること
・シティポップを「安易に、適当に扱わない」というメディア「CINRA」の意思を示すこと

Spotify×CINRAによる音声メディアのガイドマガジン「Kompass(コンパス)」の記事
あらためてバリューを言語化することで、CINRA, Inc.編集者は、物事を幅広い視座でとらえ、そこで見えた「本質」や「問い」と向き合い、模索し続ける姿勢を大切にしていることがわかりました。
その強みを活かすことで、クライアントの課題を解決したり、読者が世の中の問題について興味を持ち、「自分ごと化」するきっかけにつなげたりする記事を生み出すことができるのです。
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