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ブランド向上に必要な「期待と信頼」。元ハフポスト編集者らは、いまのCINRAをどう見る?

7 April 2023

2021年10月、「ソーシャル×カルチャー」の新コンセプトを掲げ、リニューアルした「CINRA」メディア。その船出にあたり、メディアそしてCINRA, Inc.(以下CINRA)全体の推進力をさらに高めるために、昨年からはさまざまな分野で活躍する専門家を「CINRAフェロー」というかたちで招聘しています。

半分は内部、もう半分は外部の視点でCINRAのブランドやクリエイティブの向上に努め、メンバーたちと新しい価値を生み出す。そんな役割が期待されるフェローから、現在のCINRAはどう見えているのでしょうか? 昨年からジョインした南麻理江さん、牛久保暖さんに訊いてみました。  

取材・執筆:榎並紀行(やじろべえ) 撮影:大畑陽子 編集:青柳麗野(CINRA, Inc.)  

カルチャーがつないだCINRAとの縁

―はじめに南さん、牛久保さんのご経歴とCINRAとの関わり方について教えてください。

南:新卒で博報堂に入社し、6年間メディアプランナーとして働いたあと、ハフポスト日本版のエディターを経て、2022年6月に湯気という会社を立ち上げました。いまはCINRAのフェローをはじめ、事業会社やNPOなど複数の会社・団体でコミュニケーションのお手伝いをさせてもらっています。

CINRAとの関わり方ですが、私に期待されている役割はCINRAメンバーとともに「メディアをより強いものにしていくこと」、そして「メディアを起点にCINRAブランドをもっと世の中にとって意味のある存在にしていくこと」です。そのための具体的な取り組みについては、のちほどお話しできればと思います。

南麻理江さん

 牛久保:経歴はわりと雑多なんですが、ソニーでデジカメの商品企画をやったり、ATカーニーやアクセンチュアなどでコンサルタントをやったり、電通でビジネスデザインを担当したりしてきました。現在は会社を立ち上げて、CINRAをはじめ複数社のビジネス支援などを行なっています。

CINRAでのミッションは、会社の主要サービスのひとつであるBtoB事業の提案力の強化です。CINRAでは自社メディアの運営だけでなく、受託による企業オウンドメディアの運用やコンテンツ制作、イベントプロデュースなども行なっていますが、クライアント企業に向けてCINRAの特徴や強み、世界観などをより正しく伝えるため、営業チームの育成を含めたサポートを行なっています。

牛久保暖さん

  ―お二人は、もともとCINRAとどのような接点があったのでしょうか?

牛久保:じつは私自身も、学生の頃からコンテンツの編集やライティングなど、メディアをつくる仕事に携わってきました。一時期はマガジンハウスの『relax』というカルチャー誌で制作を手伝っていたこともあります。また、1990年代の各種インターネットメディアにも関わっていました。そうした背景もあり、Webでカルチャーを扱い始めた第一世代の方々とも顔見知りだったので、CINRA創業者の杉浦さんとも、もともと接点がありました。

杉浦さんとはその後も仕事でご一緒したり、事業について会話をする機会があったのですが、ぼくが去年独立したときに「ぜひCINRAに携わってくれませんか?」と声をかけてくれたんです。

―そのオファーをどう受け止めましたか?

牛久保:率直に、ぜひやってみたいなと。じつは杉浦さんから相談をもらう以前から、CINRAの動きには注目していました。2021年の秋にCINRAメディアがリニューアルをして、「カルチャー×ソーシャル」というスタンスをより明確に打ち出した。これだけ長く続いているメディアが変わろうとしているのは、とても興味深いなと。その変革のタイミングに立ち会い、変わるためのサポートをすることに大きな意義を感じて、フェローという立場で関わらせてもらうことにしました。

20周年を迎えたCINRAメディア

  ―南さんはCINRAとどんな接点があり、どういった経緯でフェローの打診を受けましたか?

南:もともとはCINRAメディアのイチ読者でした。広島から大学進学で上京してきた当時、カルチャーの魅力に目覚めると同時にCINRAメディアを熱心に読むようになったんです。とくに武田砂鉄さんのコラムが大好きで。

博報堂に入社してからも先輩に「CINRAが好きだ」と言い続けていたら、たまたまその先輩と杉浦さんに接点があって、食事をご一緒させてもらって、そこから交流が続いていました。フェローのお話をいただいたのは去年の春。私が会社から独立したタイミングとCINRAが変わろうとしているタイミングが重なり、杉浦さんから「一緒に何かやりませんか?」とお声がけいただいたんです。

―話をもらって、どう感じましたか?

南:ワクワクしましたね。「ソーシャル×カルチャー」という方向に進んでいこうとしているのも素晴らしいと感じていましたし、会社のアイデンティティーとして掲げている「クリエイティブな意志に耳を澄ませ、他者を知るきっかけをつくる」という言葉にも共感していました。これらは私自身が一人の働き手として目指すものと共通していたし、お役に立てることがあるならばやりたい、と。

それから、ハフポスト時代に同僚だった生田綾さんが新編集長に就任していたことも大きかったですね。前職のときから尊敬していた彼女とまた一緒に仕事ができることも、とても嬉しく思いました。生田さんのチャレンジ精神や社会への眼差しには、学びと刺激をもらってばかりなんです。

CINRAメディア初の音声コンテンツを立ち上げた狙い

―今年、南さんは生田編集長や編集者とともにCINRAメディア初の音声番組『聞くCINRA』を立ち上げました。どのような狙いがあったのでしょうか?

南:先ほど、私の役割は「メディアをより強いものにしていくこと」、「CINRAブランドをもっと世の中にとって意味のある存在にしていくこと」だと申し上げましたが、『聞くCINRA』もその足がかりとなる施策のひとつです。

いま、CINRAは大きく変わろうとしていますが、現時点ではリニューアル後の新たなメッセージが、読者の方々にしっかり届いているとは言い切れません。また、そもそもCINRAの存在自体を知らない人や、昔は読んでいたけど最近は離れてしまったという人もいるでしょう。

そんな人たちに、いまのCINRA に触れてもらうにはどうしたらいいか。忙しい読者の皆さんの生活にどう入っていけるのか。同時にCINRAメンバーが、チャレンジ精神や試行錯誤を厭わないマインドを培う場所や施策は何か。それらをブランドチームで話し合い、Podcast番組を開設することにしたんです。

Apple Podcast『聞くCINRA』より Appleから聴く Spotifyから聴く

  ―『聞くCINRA』はSpotifyとAppleのPodcastランキングでもTOP100入りするなど、好調なスタートを切っていますね

南:素直にすごく嬉しいです。とはいえ、まだまだ手探りです。特に難しいのは「ソーシャルイシューをどこまで取り扱うか」というバランスの取り方。CINRAメディア本体にも言えることですが、「ソーシャル×カルチャー」を掲げているといっても、すべてのコンテンツで社会課題の視点から語り合うのは違う気がしているんです。CINRAが立つべき場所は、きっとそこじゃない。

ですから『聞くCINRA』でも、映画やドラマの「ここが好き!」という個人的な想いを深堀りしていく回もあれば、社会的・政治的な視点を入れてオーディエンスに問いかける回もあっていいんじゃないかと。聴く方には自由に行ったり来たりしてもらう。その振り幅の広さもCINRAらしさなのかなと思います。

―今後はテキストやPodcast以外にも、CINRAに触れられる機会やコンテンツを展開していくのでしょうか?

南:そうですね。いくつか考えていることはあります。ただ、そうはいっても闇雲に手を広げればいいというものではありません。やはりクオリティーだったり、CINRAとして目指したい世界観を担保できていなければ、逆にブランドを毀損してしまいますから。

『聞くCINRA』も毎回、課題や反省点がたくさん見つかります。完璧とは程遠い。けれど、CINRAに期待して聞いてくださっている方に発見や楽しみを見出してもらえるよう、一つひとつの配信の精度をあげていきたいですね。そして、このコンテンツを一つの起点としてブランド全体を強くする戦略もしっかり描いていきたいです。

「長くメディアを運営してきた実績は、大きな信頼感につながっているはず」

―お二人は、CINRAの強みはどこにあると感じますか?

牛久保:まず、アーティストやクリエイターのアサイン力の高さが挙げられます。それはCINRAブランドへの信頼性の高さゆえ。「CINRAのためなら、一肌脱ぎます」と言ってくれる人が、いかに多いかということだと思います。

あとは、やはり何と言っても自社メディアを20年も続けていることじゃないでしょうか。しかも、これだけユニークな立ち位置を確立し、多くのコアな読者に支持されている。じつは、とても難易度の高いことをやっている会社だと思います。

南:牛久保さんのおっしゃる通りで、20年続けるって本当にすごいこと。前職では私もインターネットメディアにいたからこそ、余計にそう感じます。どんな媒体にだって栄枯盛衰があり、特にWebの世界では毎年のように勢力図が変わりますよね。どの会社も手を替え品を替え、なんとかメディアを運営しているなかで、20年にわたり軸をぶらさずマイペースに輝き続けているのがCINRAメディアじゃないでしょうか。

牛久保:CINRAにオウンドメディアなどの制作を依頼するクライアント企業から見ても、CINRA自身がこれだけ長くメディアを運営してきた実績は、大きな信頼感につながっているはずです。

たとえば、いまは多くの企業がオウンドメディアを立ち上げていますが、どこかで息切れというか、限界を感じるタイミングがくるかもしれません。そんなときに「続けることの意味」を説けるのは、やはり実際にそれをやってきた人たちだけ。自身の経験を踏まえ「ここが踏ん張りどころです、なぜなら〜」と説得力をもって語れるのはCINRAの強みだと思います。

オウンドメディア制作をまとめた記事はこちら

  ―ちなみに、 CINRAの記事づくりについてはいかがでしょう。CINRAメディアが得意とする記事として、たとえばアーティストへのロングインタビューなどが挙げられますが、その人ならではの視点や思いに深く迫れる一方で、どうしても長文になりやすい傾向があります。テキストにせよ動画にせよ、ショートなコンテンツ隆盛のいま、「質」と「量」に重きを置いた読み物にはどんな価値があるでしょうか?

牛久保:ぼくは、いまの時代だからこそ大きな価値があると思っています。AIの要約力や情報を出し分ける力が急激に上がっていますよね。おそらく、今後は記事づくりもオートメーション化され、短く簡潔に要点をまとめたコンテンツがどんどん増えていくと思います。そうなったときに重要なのは、AIが要約する前の大元となる、ソース(発信源・情報源)の質と量ではないでしょうか。濃厚なソースがたっぷりあればあるほど、さまざまなかたちでのアウトプットが可能になりますから。

このソースをつくる力というのは、一朝一夕に養えるものではありません。取材相手から面白い話を引き出すだけでも、インタビュアーの力量が問われますから。そういう意味では、CINRAがずっと大事にしてきた質も量も求めるものづくりは、大きな武器になるんじゃないでしょうか。

CINRAメディアの記事ページ

メンバーの一人ひとりが成長し、100年続くメディアに

―CINRAメンバーの印象はどうですか?

牛久保:みんな素直で真面目ですよね。社内向けにセミナーをやるときも、一つでも何かを吸収しようと前向きに取り組む姿勢を感じます。ただ、あえて課題を挙げると、もう少し一人ひとりのキャラクターが見えてきてもいいのかなと思いますね。いまはどこかCINRAという大きなブランドのなかに、個性が埋没してしまっているような気がします。

クライアントから「CINRAと仕事がしたい」ではなく、「CINRAの◯◯さんと仕事がしたい」と名指しで言ってもらえるようなメンバーが一人でも増えれば、さらに強いメディア、強い会社になれるのではないでしょうか。それが、今後のCINRAに期待することですね。

―ぜひ南さんも、今後のCINRAに期待することを教えてください。

南:CINRAメディアは今年で20周年ですが、ぜひ100年続くメディアを目指してほしいです。日本は創業100年を超える企業の数が世界で最も多いと言われています。歴史があるから必ずしも素晴らしいとは言えませんが、長く続くというのは、やはり利己と利他のバランスが優れているからではないでしょうか。CINRAも変わるところは変わりつつも、このバランスは崩さずに100年を目指してもらいたいですね。

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