ナタリー大山×OTOTOY飯田×CINRA柏井「音楽メディア」鼎談レポート

07.03.2014

こんにちは、広報の塩谷です。先日開催された50人限定イベント、ナタリー×CINRA.NET×OTOTOYの「音楽情報サイト編集長鼎談」について、レポートをお送りします!

ナタリーさん、OTOTOYさん、CINRA.NET。
それぞれの特色は異なるとはいえ、音楽情報を扱うニュースサイトとしては、まごうことなき競合他社。そんな3社がそろい踏みしたイベントは、これが初めてです。ミューズ音楽院さん、そしてオトトイの学校のみなさまのお声かけによって実現のはこびとなりました。

音楽プロデューサーの永田純さんが進行役となり、ナタリーの代表である大山卓也さん、OTOTOY編集長である飯田仁一郎さん、そしてCINRA.NET編集長の柏井万作が登壇する、手に汗握る夜。かなりギリギリ感のあるイベントとなりましたので、音楽業界の方も、そうでない方にも、ギリギリOKな範囲でレポートをお楽しみいただければ幸いです…!

緊張感が走る、3メディアの編集長たち。左から、司会の永田純さん、OTOTOY飯田仁一郎さん、CINRA.NET柏井万作、ナタリー大山卓也さんです。
まずは、3媒体の概要が、それぞれの編集長から紹介されました。

ポップカルチャーニュース界のキング!ナターシャが運営する「ナタリー」

http://natalie.mu/

先陣を切るのは、国内最大級、ポップカルチャーのニュースサイト「ナタリー」さんです。「音楽ナタリー」「コミックナタリー」「お笑いナタリー」「ナタリーストア」の4つのサイトを展開をされていて、1ヶ月に2000本以上の記事を発信。月間3000万PV、Twitterフォロワーは90万人と、カルチャーニュース界のキング的な存在。社員数は約50名。社名は「ナタリー」ではなく「株式会社ナターシャ」です。

Perfumeやももクロにいち早く注目したのもナタリーさん。あの『モテキ』映画版の舞台となったことでも話題を呼びました。作中での「リリー・フランキーさん演じるセクシーな編集長」のモデルとなったのは、他でもない大山卓也さんです。

大山卓也さん

大山:ナタリーが大切にしているのは、「速い」「フラット」「ファン目線」。僕らがやっているのはポップカルチャーなので、規模はどんどん大きくしたいし、ニュースの本数やスピードには力を入れています。

—ただでさえ流れの速いWebメディア業界で、「速い」を提唱するのは容易ではありません。でも大山さんの「軽やかなノリ」は、きっとナタリーそのものなのでしょうか。

音楽、アート・デザイン、映画、演劇情報etc…。カルチャーニュースサイト「CINRA.NET」

http://www.cinra.net/

続いては、我らがCINRA.NET(シンラドットネット)。2003年にスタートした、音楽、アート・デザイン、映画、演劇情報などを取り扱うカルチャーニュースサイトです。他の2媒体と異なり、取り扱うジャンルの幅広さが特色です。

柏井:音楽やアート、映画の情報を見に来てくれたユーザーが、他のカルチャー情報に偶然出会って欲しい。そんなコンセプトで運営しています。大学生の頃、周囲にトクマルシューゴとか、group_inouみたいな面白い表現者が沢山いて、彼らのことをもっと広めたいって思いで始めたのがCINRAです。もっとも、僕も自分のバンドの宣伝も出来る!と思って入ったら、編集長になり、バンドを辞め、会社役員になっていました(笑)。

—当時はバンドマンとして全国ツアーも行うほど、音楽活動に注力していた柏井。本気で音楽をやっていた当事者だからこそ、取材対象者のことを深堀りしていくインタビュー記事を、数多く編集してきました。

また、株式会社CINRAでは、クリエイティブ求人情報を取り扱う「CINRA.JOB」と、カルチャーオンラインストア「CINRA.STORE」も展開。その他には、入場無料の音楽ライブ「exPoP!!!!!」を渋谷で開催していたり、制作会社としてWEBサイトや様々な広告ツールを制作していたり、イベントの企画や運営もしたり……と、業務内容は多岐に渡ります。社員数は、2014年7月現在で24人。

読んで、聴いて、買える!ミュージック・ダウンロード・サイト「OTOTOY」

最後に紹介されたのは今日のイベントの主催でもある、OTOTOY(オトトイ)さん。

http://ototoy.jp/

「読んで、聴いて、買える、ミュージック・ダウンロード・サイト」という言葉の通り、掲載されているインタビューやレビューに関連するほとんどの音源が、視聴・購入可能。ちょっとマニアックな切り口でのアーティスト紹介も、音楽ファンからの支持が熱い理由です。

そしてOTOTOY編集長の飯田さんは、バンドLimited Express (has gone?)のリーダーとして海外を飛び回り、かつ、人気イベント「リアル脱出ゲーム」の仕掛人でもあります。京都で有名な音楽フェス「BOROFESTA」を手がけられているのも、飯田さん。更には、ブログもほぼ毎日更新されています。

実はこのイベントの運営スタッフさんから、編集長たちには内緒で、それぞれの部下に「おたくの編集長って、どんな人?」という事前調査がされていました。そこでOTOTOY編集部の方から出て来た、「飯田さんってどんな人?」の答えが…

「化け物」

恐れられる、飯田さんでした。

…ちなみに、ナターシャの社員の方から大山さんに向けては

「インドに行ってたときに、毎日ボラれまくって意気消沈して帰って来た」
「寝坊して飛行機に乗り遅れて、海外出張に行けないことがあった」
「恋愛沙汰が開けっぴろげすぎる。別に知りたくないしまったく興味ない」

と、散々な言われようです。

でも、「ファン目線を忘れない姿勢」は、尊敬している点としてあげられていました。

「フォローでしょこれ!完全にフォロー!」と言いながらも、嬉しそうな大山さん。

3つの媒体で異なる、編集方針とその指針

愉快な序盤が過ぎたところで、編集についての真面目なお話に切り替わります。

まずは、「フラット」を指針の1つにしているナタリーさん。その姿勢を全うするためには、様々な工夫や努力をされているようです。

大山:フラットであるために、どのミュージシャンも同じ紹介方法で記事を書いています。例えばMr. Childrenはそのまま書くのに、マイナーな人たちだけ「4人組ロックバンドの◎◎◎◎◎」という肩書きがつくのは、フラットじゃない。どメジャーも、どインディーも、同じ切り口で取り扱うのがナタリーのやり方です。そして、フラットであるためにはある程度の「量」がないといけないから、幅広い音楽情報を取り扱っています。でもCINRAさんやOTOTOYさんは、うちよりももっと、サブカルチャーの味方という感じがする。

柏井:確かにナタリーさんと比べると、メジャーなアーティストの情報は少ないですね。これでも昔よりは随分、メジャーどころも増えたのですが…。

CINRA.NETの場合、「量」で勝負するにはまだまだ手数が足りなくて、そこはこれから伸ばしていきたい課題でもあります。でも僕らが一番気をつけているのは、編集の切り口です。CINRA.NETは音楽専門でも、アート専門でもないから、「自分のお母さんが読んでもわかる・楽しめる記事にしよう」ということはよく言っています。アーティストの肩書きというよりも、どんな人なのか?何を感じて生きているのか?というところを、なるべく深く突っ込んで記事をつくっています。

CINRA.NETではミュージシャンだけではなく、役者さんや、美術館の学芸員さん、政治家や起業家まで取材対象者の幅も広いので、本当に様々な価値観や考え方に出会います。もちろん自分とは違う価値観を持っている人もいたりするけど、そのときに感じた「価値観の違い」を面白がって記事にすることができれば、多くの読者の心に届くんじゃないかなって思っています。

飯田:OTOTOYは音楽ダウンロードサイトとして、音源を買ってもらう、という目的があります。だから、音楽表現のよりマニアックな部分に切り込むことが多いですね。また、小さなライブハウスや、現場で騒がれ出した瞬間をキャッチアップしていくのが、僕らの仕事だとも思っています。そして、目をかけているアーティストと一緒に成長していけるのは嬉しい。

でも、ジャンルや有名・無名で拘るのではなく、もっと広くやっていきたいと思ってます。例えばタワレコに行ったときに、色んなジャンルの音楽をふらふらと見て回って、目に留ったら試聴して、気に入ったら買うでしょう。そんな場所が、インターネットにも欲しいと思ったんです。

だからOTOTOYは、フラットに音楽情報を伝えてるナタリーさんと、配信のプラットフォームであるiTunesの間をつくりたいんですよ。それが1つのサイトで完結できればいいな、と。

大山:なにそれ、初耳だ(笑)。

メディアが「販売する」ということ

OTOTOYさんは音楽配信でビジネスをされてきましたが、CINRAもナタリーさんも、2012年からオンライン販売をスタートしました。これまで情報を伝えてきた「メディア」が「販売」にチャレンジする、その内情は?

永田:音楽配信で収益を得るって、本当に大変ですよね?

飯田:大変ですよ。僕は昔、京都のCD屋さんで働いていたのですが、浜崎あゆみや宇多田ヒカルの新曲が出たときには、1店舗で300万円も売り上げがあがっていました。でも、CDが売れなくなって。携帯ダウンロードが出て来たときに、1曲400円くらいになってしまって、そこに違和感を感じた。だから、PCをベースとした、音楽配信をやろうって決めて、そこに信念を持って続けています。大変な業界ですが、毎年何とか右肩上がりで続けることが出来ています。

柏井:僕たちも、CINRA.STOREで音楽配信をはじめたんですけど、ちょっと……大変でしたね。音楽配信にかける、OTOTOYさんの情熱を痛感しましたよ。現在CINRA.STOREはオリジナルグッズの開発や委託販売をメインにやっていますが、努力の結果、最近はちゃんと成果も上がってきました。

大山:そうそう。ナタリーストアを公開する1ヶ月前にCINRA.STOREが始まって、ざけんなよ—————!って思ったんだよね(笑)。落ち着いて見てみると、ナタリーストアはアーティストグッズがメインで、CINRA.STOREは普通におしゃれなかばんとか売ってるよね。だから競合ではないのかな?

柏井:オープン時は、ナタリーストアの担当者さんがCINRAに来て洗いざらいヒアリングされましたけどね(笑)。でもCINRA.NETのユーザーには、アートが好きなお洒落な女の子が多いので、ナタリーストアさんとのセレクトは異なるかと思います。

大山:お洒落な可愛い女の子、いいねぇ……。

これからのWebメディアの在り方は?

多くの音楽・カルチャーメディアが生まれる中で、生き残るのはほんの僅か。ずっとアーティストを紹介し続けて、音楽市場に影響を与えて来た3媒体について、司会の永田さんからも「お三方の功績は大きい」と言われます。

大山:よく若い子たちから、「どうしてナタリーは成功したんですか?」だなんて聞かれるんですけど、「毎日コツコツがんばってきました!」としか言えないんですよね。
しいて言えばTwitterとの相性がよかったっていうのはあると思いますが。次に何が来るかもわかんない。10年後に何が流行るぞ…みたいなメディア論ってよくわからないから、その都度がんばる。うん、それしかない!

柏井:なんだか、中学生の精神論みたいじゃないですか(笑)。Twitterはうちも大きな流入経路ですが、最近はやっぱりキュレーションメディアからの流入が増えてきた。そんな新しいメディアとのコミュニケーションを取っていくのも、大事だなって思ってますよ

飯田:OTOTOYではインターンの大学生がいつも活躍してくれているのですが、彼らと一緒にやるのは本当に最高ですよ。自分はこんな新しいことが出来ます!!って全力でプレゼンしてきてくれるし、若い子たちが使っているサービスなんかも面白い。

柏井:若い世代は、僕らの世代とは変わってきていますよね。そもそも、僕たちより上の世代の音楽系Webメディアは、もっと大きな企業が資本を投資してやっていたじゃないですか。でもそこに、有志の個人が仲間と一緒に小さなメディアを作って下克上をはじめた。それが、ナタリーさんやOTOTOYさんやCINRAみたいな世代ですよね。そして今は、スタートアップ系の企業が投資家から資本金を集めて、僕らよりもっとテクニカルな手法でサービスを作っていますよね。

永田:最近のスタートアップには僕も期待しています。そもそも、音楽は明らかに儲からないわけで、今、敢えてそこにやって来るというのはものすごく積極的な意志と思想のある人ですから。

音楽に対して真面目に、「作り手」であり続けたい。

大山:今はキュレーションメディアが増えてきて、良いセレクトをしているところもあるんですが、それもコンテンツの中身をつくる人がいなきゃ成り立たないわけです。そしてその「作る」作業は割と、めんどくさい。1文字1文字を、書いていくわけですから。でも僕らはそれをやり続けるしかなくて、それを武器にした上で、時代に取り残されないといいなぁって。

最近は「感動したらシェアしてね!」って、YouTubeの動画を貼付けてるだけのメディアがいっぱい出て来たでしょ。ああいうの、ホント腹立つんだよね。何がキュレーションだ!って言いたくなる。

そんな流れを見ていると、自分はコンテンツを作る側でありたいと思う。取材するアーティストがいるから、0から1を作るわけじゃないんだけど、その「伝える」という仕事を真面目にやりたいですね。

柏井:真面目に、っていうのはキモですよね。ナタリーさんを見ていると、スピードは速いのに、記事もレポートもすごくしっかり書いている。」

大山:だって僕ら、音楽のファンだから。どんだけ人間としてクズだとしても、音楽をちゃんと伝えるってことは、きちんとやらなきゃいけんと思ってるよ。もしお金が欲しいだけなら、もっと儲かるビジネスはあると思うんですよね(笑)。

編集長たちは、どんな未来を描いているのか?

今回のトークイベントのテーマは「編集長たちは、どんな未来を描いているのか?」それぞれの夢や、これから描く未来はどのようなものなのでしょう?

大山:どんな未来が来るかなんてわかんないけど、ナタリーをもっと存在感のあるメディアにしたいとは思ってます。音楽ナタリー、コミックナタリー、お笑いナタリーみたいな専門メディアがもっと増えたとき、「ナタリー」という存在が日本の文化に何らか強く貢献できるんじゃないかなって思ってます。

飯田:僕らOTOTOYはこれからも配信を突き詰めながら、他にも色々と仕掛けていきたいですね。この「オトトイの学校」もその1つです。ここミューズ音楽院や、渋谷PARCOにある2.5Dの人たちみたいに、面白いことをしよう!って人たちは大勢いる。そんな人たちと、刺激や興奮を起こすようなことを仕掛けていきたいなぁと。

柏井:場所があるって本当に羨ましいですよ。OTOTOYさんのオフィスでは、イベントも出来るんですよね。僕は個人的に、アンディ・ウォーホルのThe Factoryみたいな、色んなアーティストたちが集まる空間には憧れがあるので、場所の運営はやってみたいですね。

大山:ホントに?僕は場所に対する憧れ、ないなぁ〜!めんどくさいじゃないですか、毎日、店番とかしたりしなきゃいけない…。カフェとかも始める人多いけど、僕はやりたくない。僕は絶対インターネットの方がいい…。

—それからも、編集長同士、そして音楽が好きな者同士、様々な意見がぶつかった夜でした。けれども大山さんのNG発言が多すぎて、全てをお伝えするのは難しいので割愛させていただきます(笑)。

意見は食い違いながらも、三人に共通していたのは「音楽が好きで、音楽を信じてる」という真摯さ。

ナタリー、OTOTOY、CINRA.NET。「こんな編集長たちがつくっているんだ!」という気持ちで、各メディアを読んでみるのも、面白いかもしれません。

「こんどはもっと激しく殴り合いをしましょう!」と約束を交わしながら、初の「音楽情報サイト編集長鼎談」は大盛り上がりで終了しました。ミューズ音楽院、オトトイの学校のみなさま、司会の永田さん、素敵な機会をありがとうございました!

株式会社CINRAのFacebookも更新してます!
こちらもぜひチェックしてみてくださいね。

https://www.facebook.com/cinrainc

Written by:
Back
sp-menu
Language
JP
EN
Social Media
F
T